E=mc2



御飯がおいしくて
おいしいと感動している自分が情けなくて
思わず涙を流した
前にいる人は
そんな事に頓着せぬ様子で
笑って僕を見て 一言
「おいしいね」
と言った

体が生きる事を望んでいる
精神(こころ)はこんなにも死にたがっているのに
精神は体に負けて
僕は死ねなかった
死ぬ事ができず
体は力を欲して
「こんなにおいしいのだからもっと食べな」と精神に言った
精神は頼るものが体しかおらず
だからもう一口食べた

ゆっくりと生きてゆく
力が満ちてゆく
生きてゆく為の力が
存在するだけでも必要な力があって
僕はそれに気付かなかった

どんなに哀しくても
どんなに苦しくても
どんなに楽しくても
            まったく動けないとしても
そこに存在しているから
   存在しているだけで
力はいるのだ
全てを取り込み
出す
    力が

僕を助けてくれた人は
僕の涙に頓着せず
空っぽになったお茶碗に
御飯をついでくれた


夢実の言霊

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