言われてしまった。
「君は……空みたいに優しいな」
冷涼でともすれば寒ささえ
感じかねない
秋の微風を顔に感じ
何を話すでもなく道を歩いていると
唐突に
君は言った
言われて空を見上げた瞬間に
私は君の言葉を
茶化してしまう
機会を失ってしまった事に
気付いた
私は、何も言えなかった。
いつも君は
私の予想外の行動をとる
悪態ついて
ボケて
ツッコんで
オチャラケていくやりとりが
私達の仲というものだろう
相手を思いやっている事が
お互いに判っていても
敢えて言わなくてもいい筈だ
そんな言葉に支えられるような
つきあいではない筈だ
けれど、私は、言われてしまった。
まどろみの昼のうたた寝の中
ボディブローをくらった気分……
にしては悪くない
といっても私はマゾではない
うまい切り返しも浮かばず
私は茫然とするしかなかった
しかも
「空みたい」ときたもののだ
空が大好きだと
豪語していた事など
忘れているのだろうか
大きくて
素知らぬ顔して
それだけで人を和ませられるほど
私は優しくない
きっと
素直に空がきれいだと
言ってしまうのがいやで
そんな風に言ったのだな
そして
代わりに言った言葉の方が
恥ずかしいのに気付いて
そんな風に
知らぬ顔して
ほけほけ歩いているのだな
「有難う」
そんな事ない、とも言えなくて
無視してしまうのも申し訳なくて
受取るには抵抗があるのだけれど
言ってしまった君の気持ちに応えて
なるべくさりげなく聞こえるように
なるべく自然に聞こえるように