あとがき「赤い花火」

 

 さてさて。「赤い花火」いかがでしたか?
 なんとか秋に突入するまでにアップできてほっとしております。いや、まあ、当然夏以外にこのお話を読まれる方もおられるでしょうが。

 いつもの私の方針(?)に沿ってこのお話も最初はノートに書いていました。それは結局秋口に書き始めたんですけど。
 とある花火大会で、明るさが足りないためにいまいち華やかさにかけるものの、だからそこ大振りの花火のために効果的に使われる紅い花火に妙に惹かれてしまいました。
 このひっそりさが気になって、こいつを使ってなんとかお話を書きたいなー、と思ったのがきっかけです。
 ある意味、「キーワード」を元に書いた話ですね。(ちなみに「薬玉」「雨が降る」もこの部類)

 最初は単純に、親方の思い入れたっぷりの、でも誰も見向きもしないような花火に関して、通りすがりのカップルの女性が「でも――私は、あの、ひっそりと上がる花火、好きだな」というのを親方が訊いて心暖める、というお話の筈でした。

 悪くない。悪くない、とは思うけど――よくもないな……。

 それで更に頭を絞るわけです。ここまでくるともう「赤い花火」を使って話を書く事を断念する気はさらさらありません。とにかく粘ります。
 「これ」というネタも浮かばず、連作にすることすら考えます。
 鉱物の採取の関係で赤い花火しか上げられない、もしくは逆にそれが上げられないとか。視覚障害である波長を認識できない(赤が見えない)とか。冷凍睡眠から覚めた花火師の話とか。
 ――アイデアがまずいかどうかは置いとくとして(置いといていいのか?)――書けない。書きたいところまで行かない。
 そうして行き着いた先が、この「赤い花火」です。
 頑固な花火師のオヤジが結構いい味だしてくれて、楽しく書けました。

 基本的に私は政経にうとく、苦手です。お話でもその手の話題を書いた方がふくらむのが判っていても、なかなかイメージがわかずごまかしてしまうことが多々あります。
 そんな私がいざ国際的・政治的話を書くことになってしまい――困りました。
 独立政権の共産主義国。……北朝鮮とか、ソ連とかかなあ……。……。……・
 ええ、適当です。適当ですともさ。
 平和ボケした日本にいて、亡命についてリアルに書けない――ことはないだろうけど、私にそんな描写を望んでいる読者はいない。いないに違いない。いない、って事にしておこう(おい)。
 しかし、結局どこかで見たような国の形成を使ったわけですが、ただ単に「赤い花火に対する思い入れ」を書くためだけに国を分断したり、併合したり……。「花火」なだけに、仕掛けは大きい方がよろしいようで。
 ………………………………。
 ……自分自身の名誉のために言い訳しますが、決して、あとがきでこのオチをつけるために延々「赤い花火」を書いていたわけではありません。ええ、絶対ありませんですとも。

 まあ、そんな感じでいつものようにノートにこしょこしょ書いたわけですが……実は、かなり納得のできないできになりまして。
 日下部さんはいいんですよ。動きたいように動いてくれて。
 でも、公子ちゃんが……。
 ――と、いうことで、HPにアップするに際してかなり書き換えました。
 というか、公子ちゃんの出番、激減しました
 本当は亡命のあたりとか、新聞社での日下部さんについて語る会話とかあったんですが、全部削りました。そのぶん日下部さんの科白が増えています。
 ……じじい率あげてどーするんだ……。
 でも、そのおかげで今度は納得できる出来になりました。
 構成を考え直すとき、新しい話を考えているときのように、ワクワクしました。

 ……今回は何かあとがきがムッチャ長くなりました。
 話もたった一発の「赤い花火」の為に延々続いていましたが。
 まあそういう藤村貢的ぜいにくを楽しんでいただければ幸いです。

 夏の終わりの花火に、皆様の幸せな気持ちを呼び起こされますように。
 気が向けば感想などいただけると嬉しいです。

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